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よく分かる「高齢者歯科・訪問診療」

GUIDE
#03
おうちに行こう!〜訪問歯科診療のススメ〜

咀嚼障害は何によって起こるのか

日本歯科大学教授 口腔リハビリテーション多摩クリニック院長菊谷武先生
このコラムの著者
日本歯科大学教授 口腔リハビリテーション多摩クリニック院長
菊谷武先生

咀嚼障害は何によって起こるのか

さて? 義歯もしっかりあっている田中さん、どうして噛めないのだろう。年のせいなのか?それとも・・・。いずれにしても、年のせいなんて言えない。
そして、もう一つ、研修会で気になることを言っていた。その時はピンとこなかったけど、高齢者の咀嚼障害の原因についてやっていたな?資料はどこかにまだあるかな?

咀嚼障害は何によって起こるのか?
本来、僕たちが、物を食べようとしたとき、その食べ物を口の中でどのように処理するか(噛むのか噛む必要はないのか?舌で押しつぶして食べるのか?嚥下だけで対応するのか?など)について、過去の経験などとともに判断する。また、捕食の際に、歯根膜感覚により歯ざわり歯ごたえを感知し、後の口腔内での処理方法の情報を得る。そして、ある程度の硬さを持ち咀嚼が必要な食品に対しては、舌で受け取った後、素早く咀嚼側の咬合面に舌で食べ物を移動させ、舌と顎の動きの協調運動により上下の歯列を使って粉砕処理する。ここで、摂取食品がプリンのような柔らかい食品の場合は、歯を使う咀嚼はほとんど行われず、舌と口蓋で押しつぶすように処理される。ミキサーのような食物の場合には口腔の役割はまとめて咽頭に送り込むことに限定される。

咀嚼障害は何によって起こるのか?のイメージ

咀嚼障害は、その原因から器質性咀嚼障害と運動障害性咀嚼障害に分けることができる(図1、図2)。

器質性咀嚼障害と運動障害性咀嚼障害のイメージ

器質性咀嚼障害とは、歯をはじめとする咀嚼器官の欠損によっておこる咀嚼障害である。この器質性咀嚼障害に対しては、義歯などの補綴治療による咬合回復が咀嚼機能改善に対する唯一の方法となる。一方、避けては通れない生理的老化により身体機能は低下を示し、また、依然日本人の死亡原因の上位を占める脳血管疾患などによっても身体機能の低下が見られる。これら身体機能の低下は、上肢や下肢などの運動機能の低下に基づくが、運動機能の低下や障害は口腔にも及び咀嚼障害を引き起こすことになる。 運動障害性咀嚼障害というべき状態である。この場合には、咬合回復に加えて、運動機能の回復を目指すレジスタンス訓練や巧緻性の訓練の実施が必須となる。一方でパーキンソン病などの神経筋疾患、そして、アルツハイマー病をはじめとする脳の変性変化を伴う認知症を示す疾患の多くが、著しい運動機能の低下を伴い、あわせて咀嚼機能も低下するが、疾患の進行と伴に、その障害は悪化の一途をたどる。そして、残念ながらこれらの疾患の多くは現在でも有効な治療法が確立されておらず、口腔の運動機能に限らず全身の運動機能に対する改善の試みも功を奏さない。よってこれらを原因とした咀嚼機能の回復の見込みは少ないということになる。

高齢期における咀嚼障害に対する考え方のイメージ

そうか!深々と座ったソファーから立ち上がれなかったのも、診療室での歩みも異常に遅かったのも、年齢に伴う身体機能の低下が原因だったんだ。だとすれば、身体機能の一部として舌や口唇や下顎の動きが悪くなってもおかしくないということになる。噛めない理由は、生理的老化ということになるのかな?そうだ、久しぶりに書いてもらった問診票のチェックも忘れないようにしよう。ん?なんて書いてあるかわからない「パーキンソン病」かな?ずいぶん読みにくい字だな。待てよ、パーキンソン病の治療薬でドーパミン系の薬を内服しているとすると、麻酔を施す時に要注意かな?でも、特に麻酔処置も今回は必要ないし、特に注意することはないかな。

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