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高齢者歯科・訪問診療はどうあるべきなのか

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高齢者歯科・訪問診療はどうあるべきなのか

2018年11月25日。
加藤塾より塾長の加藤武彦先生をはじめ、黒岩恭子先生、足立融先生をお招きして、『「食べる・噛める喜び」を支援する歯科医療』というテーマで講演会を開催させていただきました。
講演会の様子は、今後、当サイトならびにデンタルマガジンなどでお知らせいたしますが、今回、講演会後の先生方に少しお話をお伺いすることができましたので、先生方の生の声をお届けいたします。

  • 講演を行う加藤武彦先生
  • 講演を行う黒岩恭子先生
  • 講演を行う足立融先生

健康な時だけ患者さん。来られなくなったら知らないなんて許されますか?

みなさん。ご講演お疲れ様でした。
まず、最初に超高齢社会になり、今後、「高齢者歯科・訪問診療」とは、社会に対してどのような役割を果たし、期待に応えていくものでしょうか。

まず、最初に言いたいのは、自分が今まで診ていた患者さんが、歯科医院まで来ることができなくなったとしたら……こちらから行くのが当たり前でしょう。と、いう事です。健康な時だけ患者さん?来られなくなったら知らないよ。なんてことはダメでしょう!

本来なら、まだ、歯科医院に通っていただいているうちに、「いざとなったらちゃんと私が行きますからね。」と、話をして安心してもらうのが歯科医師としての原点なのだと思う。歯科大学での教育は、体が健康で通院できる方への治療が中心ですが、これからの超高齢社会で患者さんが、間違いなく歯科医院に通えなくなってくると、これだけでは許されない時代になってくる。フィロソフィー(哲学)としてそこを自覚すると行かざるを得なくなる。医療人としてそこまで考えていただきたいと思います。

訪問診療は、訪問そのもののハードルが高いと思われがちなのですが、実は、以前から診ていた患者さんの所へ訪問する場合は、ハードルはそんなに高くない。診る場所が違うだけだという感覚を持っていだければ、と思います。歯科医師としても、患者さんの生活が見られたり、治療が生活の一部として入っていける事は、とてもありがたい事なんですよ。

かかりつけ医として家族全体をサポートさせていただくと、患者さんの家族が倒れられた時なども自然に患者さん側から『来てください。』と、言っていただけるんです。私などは、お年寄りの家族が万一入院されたら、その時は、『まず私に連絡をください。』とお伝えしています。

患者さんの方も、知らない先生だと拒否感が出てくるんだけど、今まで診ていた先生が来てくれると素直にお願いできる。「あ、うちの先生がきてくれた」っていう事で、なじみの患者さん、なじみの家族の人とコミュニケーションが取れるようにしていると、スムーズに入っていける第一歩になるのではないでしょうか。

人としての尊厳まで取り戻す。それができるのが、訪問診療で行う高齢者歯科。

本日の加藤先生の講演では、「人間性回復の歯科医療」というお話で、いわゆる歯科(治療)の範囲にとどまりません。まだ、歯科でそこまでできるという意識をお持ちの歯科医師は少ないのでは。と思いますが……。

大学の教育は、詰めた被せたといういわゆる“修理屋”の教育なんです。しかし、人間性の回復までやって差し上げるのが、『高齢者歯科』というもの。患者さんにとって、歯が無くなったり、義歯がパカパカ落ちて来るという事は、自分が現役で活動していた時にくらべてなんとも情けなくて悲しい事なんです。また、同時に患者さんには、治したくても自分で通院ができなくて、訪問診療にも来てもらえないから治せない。という歯科への残念な気持ちもあるんです。

歯科医師の方々は、来院されなくなった患者さんのその後を、あまり見たことが無いのでしょうか。

大学では、医科・歯科を問わず「看取り」という視点での教育は、ほとんど無かったんです。医師にとって死は、敗北なので。特に歯科にとっては、経験の無い部分で、そこへの壁というものはあると思うのです。しかし、生の先に死があるという延長線の中で、最後の時間を気持ちよく旅立ってもらえるという所には、まだ力になれる事があると思います。

かかりつけ医として訪問先で定期健診をしていると、その“家庭ごと”の特徴や思いなども見えてきます。口腔というのは、体全体のコンディションの変化や兆候を見るのにとても都合の良い場所なのです。変化を一番に察知し、水分の補給量や飲み方などの指導ができたり、他職種と情報交換することで早く、寝たきりなど(尊厳を損なう状態)にならないように対策することだって可能なんです。

高齢者歯科・訪問診療とやりがい

訪問診療をやるのなら、口腔だけではなく、全身、さらには心についてまで勉強して欲しいんです。社会からリタイアしたり、身内の不幸などが重なったり、みんなマイナスマイナスで、全ての事に悲観的になり人生に対して『もういいや』になっちゃうわけですよ。相手の気持ちまで理解できる医療人になると、口腔だけじゃなくて全身の事が見えてくる。在宅診療というのはそこまで人を診る事が出来ないと。口腔っていうのは、本当にいい場所なんですよ。呼吸・咀嚼・発音・美容といった様々なことに貢献できるんです。」

そう、『仁』の心を説く加藤先生に、最後に、「高齢者歯科・訪問診療は、一般的な歯科とはまた種類が違う、大きなやりがいを感じられるジャンルだと思いますか?」とお伺いしました。すると……

加藤先生は、「ね!」と言いながら満面の笑みと共に黒岩先生と足立先生に期待を込めた強いまなざしを送り「間違いない!」と断言されたのでした。

今回の講演の内容は、今後、モリタ・デンタルマガジンでの記事として、また、『当サイト』でもその一部を動画としてお届けする予定です。今回の講演会は、3人の先生の経験と技術が満載の充実した一日となりました。こちらも、ぜひご期待ください。

編集後記

「モリタさんも『高齢者歯科・訪問診療』というジャンルを前に出していろいろな活動し始めたのはありがたいよ。今日は、まだまだ触りだから。もっと、いろいろ深い所の話や実習をしたいんだ。」 そう、言い残して加藤先生は、会場を後にされました。

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